社交不安障害の治験

この院長の日記をお読み頂いている方の中で「SAD」という病名をご存じでしょうか。
『Social Anxiety Disorder』の略で、日本語では、社交不安障害といいます。
そもそも、この疾患は、「社会不安障害」と呼ばれていましたが、「社会不安」という言葉には誤解も多いことから、2008年に日本精神神経学会において、より実態に近い表現の「社交不安障害」という名称に変更されました。
主な症状としては、最も多いのが『見知らぬ人や、少し顔見知りの人との会話』と『人前での発言・スピーチ』、次いで、『権威がある人(社会的立場が上の人)との面談・会話』、『会社で電話をとる』、『受付で手続きをする』、『人前で文字を書く』、『人前でご飯を食べる』、『会食やパーティに参加する』『自宅(ストレスとなる因子がある場合)』など。
このような場面で、さまざまな症状が身体に現れ、強い不安を感じる、強い緊張を感じる、頭が真っ白になり何も答えられない、声が震える、声が出ない、手足の震え、めまい、動悸、口が渇く、赤面する、汗が出る、吐き気がする、胃のむかつき等の症状があり、近年注目されている疾患の一つです。
そこで、今回は、社交不安障害の治験を行います。このお薬は、2011年より国内で「うつ病・うつ状態」の適応症で市販されているエスシタロプラムシュウ酸塩と同じ成分が入っており、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に分類されます。また、このお薬自体、1998年に欧州で臨床試験が開始され、2001年にスウェーデンでうつ病の治療薬として認められました。さらに、2011年4月までに、アメリカ合衆国や英国を含む97の国と地域でうつ病の治療薬として認められ、2010年8月末までに約2億3千万人以上の患者さんに使用されています。そして現在、「社交不安障害」について2010年10月現在、77の国と地域で承認されています。
今回の治験では、社交不安障害の患者さんに治験薬を13週間服用していただき、このお薬とプラセボ(有効成分を含まない錠剤)を比較することで、効果と安全性を調べることを目的としています。年齢18歳~64歳の男性および女性で、社交不安障害でお悩みのかたが参加の対象です。
治験へのエントリーは希望していただいてもかまいませんし、私からお話することもあるかもしれません。エントリーの基準を満たしていれば、治験をすすめてみたいと考えています。ご協力宜しくお願いいたします。